シシルドベルマーク

和訳の記録保管用

ミュージカル Rebecca 2.Du Wirst Niemals Eine Lady 補足2

1で書ききれなかった細々とした点を。

 

 

・夫人がマキシムがお茶に誘う場面で、夫人はマキシムがコーヒーを飲む席に自分たちがご一緒すると言い、反対にマキシムは2人がコーヒーを飲むのに自分がご一緒すると言って、お互いに相手を主体に置くことで相手への敬意を示そうとしています。3人でお茶しばくんだからどっちでも一緒じゃんと思ってしまう大雑把な私は決してレディーにはなれない。

また、マキシムは夫人だけではなく「私」も含めたSie beide(「あなた方お二人」)と呼びかけることによって、「私」に対しても夫人と同列の敬意を表しています。原作でも似たような箇所があり、夫人が「私」にウェイターを呼ばせようとするのをさえぎって、マキシムが自分でウェイターを呼び、更に座り心地の良い椅子を「私」に譲って自分は固い椅子に座るので、夫人の知り合い連中から軽んじられるのに慣れていた「私」がマキシムの態度を意外に思う場面があります。

 

・"Gemeinsam werden wir das Beste draus machen"は直訳すると「私たちはその中から最上のものを作り出す」なのですが、前後と併せても意味が分からず、辞書などにも類似の表現が載っていなかったため、「良い関係を築ける」とふんわり訳してしまいました。もしもドイツ語にお詳しい方で意味をご存じの方がいらっしゃいましたら教えていただけるととてもうれしいです。

 

・普通の若い娘なら一目モンテカルロを見るためなら"Augenlicht"=「視力」だって差し出すだろうと夫人が言うのに答えて、マキシムはそれでは何の助けにもならない、つまり視力を差し出しては見ることは叶わないだろう、という皮肉を返します。同様のやり取りが原作でもあるのですが、ミュージカル版の夫人が皮肉に気が付いてたじろぐのに比べて、原作ではなんとこの皮肉も夫人には通用しません。原作で通じるのはあなたが荷造りを手伝ってくれるんですか?の皮肉だけです。原作の夫人の方が強い。

 

・"Niveau”はそのまま訳すと「水準、レベル」なのですが、日本版の「す~む~せか~いが~ち~が~う!!」が意味的にもぴったりですし、なにより初演の寿さんのどすのきいた歌い方が頭から離れないのでそのまま使いました。

レベッカはソロの大曲以外にも面白い曲がたくさんあるので、ハイライト版ではなく全幕収録版でCDが欲しかった・・・。

 

・夫人が「私」にいかにレディの素質が足りていないか最後にまくし立てるパートで、確証はないのですがちょっとあれ?と思うところがあったので書きます。

ドイツ語は英語やフランス語などと派生元が同じで、また地理的に地続きということもあり、英語やフランス語から輸入されて定着した単語が多いのですが、ここで「私」に足りない素養として夫人が挙げている"Nonchalance","Contenance","Elegance"の中で、Contenanceはフランスが原語でドイツ語も同じつづり、Nonchalanceは仏独英3つで同じつづりなのですが、Eleganceはフランス語と英語はこのままなのですがドイツ語では形が変わってEleganzとなります。この3つの単語がすべて-ceの形になるのはフランス語しかないので、韻を踏むために揃えたいというのもあるかもしれませんが、居る場所がモンテカルロなので夫人が気取ってフランス語の単語を使っているという可能性も高いかなと思います。(なお、このつづりはドイツ語版初演のCDのブックレットを参照しているので、それが間違っていないという前提に立っています。このブックレット、多くはないんですが時々どう読んでも誤記だろうこれはという箇所があるんですよね・・・。)

 

・閑話:ミュージカル版には一文字も出てきていない単語なんですが、調べてへぇ~と思ったのでついでに書いておきます。旧訳版のモンテカルロのシーンで何度か出てくる「タクゾル」と「イーノス」、注釈もついていないので何なのかさっぱりわからないまま読んでいたのですが、ググったら英語の質問サイトにeffervescent antacid=発泡性の胃腸薬だと書いてありました。

TaxolはWIkipediaによると化学療法に用いられる薬の成分らしく1966年に発見、1990年に商標登録されている(全然詳しくないので変なことを書いているかもしれません、すみません)とのことなのでレベッカに出てくるTaxolはもう胃腸薬としては残っていないらしく、一方イーノス(英語原作だとEno's)はAmazon UKで調べるとEnoの商品がいくつも出てくるのでまだ残っているようです。あまり詳しく調べていないので本当にこのメーカーのことを言っているのか確かではないのですが、もしかしたらマキシム・ド・ウィンターお気に入り?の胃もたれの薬ということで機会があればぜひ。

新訳では注釈がついていたか気になるのですが、本が家のどこかにはあるはずなのに見つけられないという状況なので、もし確認出来たらこっそり書き足しておきます。

(実は個人的には、夫人だけではなくマキシムも、原作を何度も読み返すうちにこいつなかなか嫌な奴だなと思うようになったミュージカルにはない場面がいくつかあるのですが、このタクゾルとイーノスが話題に上がるプロポーズの場面もそのうちの一つです。超不定期更新なのでそこまで行けるかわかりませんが、その場面まで行くことができたらまた比較して書きたいと思います。)

 

・閑話その2:ミュージカルと関係のない話題を書いてしまったのでさらにどうでもいいメモ書きをついでに書くのですが、マキシムの車に積まれていて流れで「私」が貰うことになった詩集の中の一篇が原作には出てきます(作中では誰の詩かは出てこないのですが、フランシス・トンプソンという方の詩らしいです。)

外国語が不得意なうえに詩は輪をかけて分からないのでほぼ確実に間違った解釈なのですが、この詩の中の"I sped and shot"(旧訳では「ましぐらに、ころげまろびつ」(上巻p64)と訳されており、そのままの意味は、急いで駆けに駆けて、というようなことらしいです)が

Up vistaed slopes I sped
And shot, precipited

という風にAnd shotが目立つような改行をされていて、目に飛び込んできたときにレベッカの死因を連想しました。ただ『レベッカ』の中だけではなくもともとそのような表記のようで、私の連想は多分想定されていない効果なのだと思います。

ミュージカル Rebecca 2.Du Wirst Niemals Eine Lady 補足1

 前回の記事の曲で、訳しているときに面白かった点や解釈に自信がない点、また原作との比較などを書いていきたいと思います。原作から引用をするときは、基本的には昭和46年発行、新潮文庫、大久保康雄訳の旧版からです。

 

 ヴァンホッパー夫人の態度の違いについて

 私は日本版のミュージカル→小説の翻訳新版→翻訳旧版→ドイツ語版のミュージカル(CDや映像)という順番で『レベッカ』という作品に触れています。

 なので最初にミュージカルを見たときはあらすじくらいしか知らない状態であまり細かいところまで見れていなかったと思うのですが、あらためてドイツ語版を読んでみると、日本版で最初に見たときはヴァンホッパー夫人が「わたし」を顎でこき使っている印象が強かったのが、ドイツ語版では夫人が自分では良かれと思って「わたし」にレディとしてのふるまい方をガミガミ言っているのが目立ちます(ただしそれが図々しく振舞え、目下の人間には頭ごなしに命令しろ、といったいまいちずれたアドバイスなので、余計なおせっかいなのですが)。

 これは、コンパニオンという職業が身の回りの世話をする使用人というよりは、上流階級の夫人の話し相手としての役割が強く、この職業に就く婦人もアッパーミドルクラス(中流階級の中の上位階級)以上の出身だけれども家族を亡くしたなどの理由で自分で生計を立てなければいけない場合が多かったとのことから、夫人も「わたし」に使用人としての仕事だけではなく、自分の相手が務まるように階級の高い人間の立ち居振る舞いを覚えさせようとしていると思われます。ただ、『レベッカ』の主人公の生い立ちや階級については父母を亡くして生活のためにヴァンホッパー夫人に雇われていること以上のことは書かれていません。(英国文学やイギリスの階級制度について研究しておられる新井潤美さんの著作の中で『レベッカ』の中ではなぜ他の英国文学に比べて階級制度にまつわる要素が薄いのか触れていた箇所があったと思うのですが、手元に本がないため確認することができず・・・。著作が何冊もあるのですが、メリーポピンズなどの児童文学と階級制度を絡めてあるものや、使用人の仕事や地位体系について書かれている本などどれも面白いです)。

 それに対して原作では、「わたし」が夫人との関係について「わたくしの主人なのですわ。わたくしを、ほんとうの『お相手』に仕上げようとしているんです。・・・」(上巻p45)(原文では"... she's an employer. She's training me to be a thing called a companion, ...")とマキシムに説明しているのでコンパニオンとして雇われてはいるのですが、夫人としては「わたし」によくしてやっているつもりのミュージカルに比べて、扱いがぞんざいです。これには理由があり、かつて夫人と「わたし」は親子に間違われたことがあり両人ともいたたまれない思いをしたため、夫人は他人の前では特に「わたし」を大した存在ではないと示すためにこうした態度をとるのだという説明が語られています。

 加えて、ミュージカルが尺の都合上エピソードを短くまとめられているのはもちろん、原作は主人公の「わたし」による完全な一人称の小説であるのに対し、ミュージカルはどうしても観客が客席から第三者として観る形になるので、ウェイターが夫人と自分に対してあからさまに態度に差をつけることへの「わたし」の嫌悪や、夫人が好奇心によってずけずけと他人の領分へ踏み込むことに対して「わたし」が感じるいたたまれなさは原作のほうでこれでもかと語られることになります。

(閑話:原作では、好奇心の強すぎる夫人に対する周りの態度に自分がいたたまれなくなる状態を「わたし」は「まるで自分を、主人の苦痛を代って引き受けなければならない「王子さまのお相手」のように感じた。」(上巻p23)と表現しているのですが、聞きなれない表現だったので原文を当たったところ、whipping boy(王子が何か悪いことをしたけれども王子を鞭打つわけにはいかない、そこで王子の代わりに彼の友人や小姓などを鞭打つことになっており、そのために用意されている少年のこと)の訳でした。)

 ただミュージカルでは原作にはないやり方で二人の関係の不均等さを示していて1つ目はこれがドイツ語原詩であることによる互いへの呼びかけの違いです。ドイツ語の二人称には2種類あって、あまりよく知らない相手や目上の人に対するSieと、親しい相手や時には馴れ馴れしさもあらわすduがあります。「わたし」から雇い主であり年上でもある夫人に対してはSieで呼びかけているのに対し、夫人から「わたし」に対する呼びかけはduです。

 また、2つ目にミュージカルなので夫人のセリフはもちろんほとんどが歌として表現されるのですが、彼女が「わたし」に話しかける歌の中にはmein Kind(直訳すると「私の子ども」ですがここでは「お嬢ちゃん」と訳しました)やDarlingといった、一見親しげだけれども相手を下に見ている呼びかけがテンポよく何度も出てきます(おそらくmein Kindがこの歌の中で7回)。この呼称で、夫人が「わたしのこと」を内気で自分のアドバイスを呑み込めない半人前として扱っていることが印象付けられます。

 上記色々とまとまらず書いてしまいましたが、ミュージカルと原作の夫人を比べると、図々しく探り屋で「わたし」を見下しているのは共通していますが、ミュージカルの夫人の方が、一応(言葉の上だけでは)主人公のためを思って口出ししている、マキシムを詮索するいたたまれない会話も歌に乗せてコミカルな場面になっている、主人公に文句を言うときも原作ほど厭味ったらしい言い方ではないなど、憎めない人物になっています。

 この違いは一幕の後半に大きく響いてきて、原作ではモンテカルロ以降登場しないヴァン・ホッパー夫人が、ミュージカルでは「わたし」の唯一の招待客としてマンダレイの仮面舞踏会に再登場します。ここで再登場させた理由は、前後の展開がシリアスなので盛り上がるコメディソングを入れたい、また、マンダレイの外の人間を配置することで主人公が仮装して降りてくる場面を劇的にしたい等の理由があると思うのですが、逆にそれらの理由で夫人をここで再登場させるために、「わたし」がまあ、他に呼ぶ人もいないしあの人を呼んでもいいかな・・・と思える程度にモンテカルロの場面での憎らしさを抑えて愛嬌のある人物にしておこうという計算かも?ともおもいます。

 長くなりすぎたのでこまごまとした補足はまた別日に書きます。

 

*1

*1:デュ・モーリア、『レベッカ(上)』、大久保康雄訳、新潮文庫、37刷、昭和46年10月30日発行

ミュージカル Rebecca 2.Du Wirst Niemals Eine Lady 和訳

場面概要

前の場面から、主人公が21歳の時の回想へと移る。「わたし」はアメリカ人の裕福なヴァン・ホッパー夫人にコンパニオン(裕福な女性の話し相手をする職業)として雇われ、旅の連れとしてモナコの高級ホテルに宿泊しているが、夫人は内気な「わたし」の態度を気に入っていない。

ホテルのエントランスロビーで、詮索好きの夫人はコーンウォールマンダレイという屋敷を持つ英国紳士のマキシム・ド・ウィンターを見つけ、むりやり会話に誘う。「わたし」は謎めいた彼の様子に心を惹かれる。

 

 

 

2.Du Wirst Niemals Eine Lady

<Mrs. van Hopper>
Sie kennen doch meine Gesellschafterin,
haben Sie sie gesehen?

<Kellner>
Nein, bedaure, Madame.

<Mrs. van Hopper>
Da bist du ja endlich!
Wo um Himmels willen warst du so lange?

<"Ich">
Ich musste noch die Modezeitschrift holen.

<Mrs. van Hopper>
Wozu denn das?

<"Ich">
Sie wollten sie lesen,
Mrs. van Hopper?

<Mrs. van Hopper>
Ich bezahle für deine Gesellschaft,
mein Kind,
und ich hass' es, zu warten.

<"Ich">
Sorry, Mrs. van Hopper.

<Mrs. van Hopper>
Ach! Keine Sahne -
dieser Kellner ist ein Vollidiot!

<"Ich">
Ich ruf' ihn, Mrs. van Hopper.
Bitte, Monsieur!

<Mrs. van Hopper>
Nenn' ihn nicht Monsieur
und bitte ihn nicht!

„Ich":
Bitte sehr, etwas Sahne!

<Mrs. van Hopper>
Mein Gott!
In 5-Sterne-Hotels
schenkt der zahlende Gast
dem Kellner kein Lächeln.

<"Ich">
Sorry, Mrs. van Hopper.

<Mrs. van Hopper>
Statt "Bitte" zu sagen,
das merk' dir, mein Kind,
gibt man hier Befehle!

<"Ich">
Ja, Mrs. van Hopper.

<Mrs. van Hopper>
Verwahrlost und elternlos
kamst du zu mir.
Ich nahm dich aus Mitleid.

<"Ich">
Das weiß ich,
Mrs. van Hopper.

<Mrs. van Hopper>
Zum Dank muss ich mich täglich
für dich genier'n,
und mehr und mehr
wird mir klar:

Du wirst niemals eine Lady,
weil dir jede Klasse fehlt.
Du wirst immer eine kleine,
unscheinbare, scheue,
graue Maus sein.
So sehr ich mich auch quäle,
ganz egal, was ich erzähle:
Du wirst es nicht lernen.
Nein, niemals wirst du eine Lady sein!
Na ja... Hörst du mir überhaupt zu?
Was gibt's zu glotzen?

In 5-Sterne-Hotels,
das merk' dir, mein Kind,
begafft man nicht Fremde.

<"Ich">
Sorry, Mrs. van Hopper.

<Mrs. van Hopper>
Oh! Hallo!
Na so was!
Das ist ja Mr. de Winter...

<"Ich">
Ein Bekannter von Ihnen?

<Mrs. van Hopper>
Liest du keine Illustrierten?

<"Ich">
Ich lese lieber Bücher,
Mrs. van Hopper.

<Mrs. van Hopper>
In feiner Gesellschaft
muss man wissen, mein Kind,
wer begehrt und verehrt wird, mhm? Haha!
Mr. de Winter? Halloho!
HIER!!!

<Mr. de Winter>
Guten Abend!

<Mrs. van Hopper>
Sie erinnern sich!
Edith van Hopper,
Park Avenue, New York.
Ach, setzen Sie sich doch.
Sag dem Kellner,
er soll noch eine Tasse bringen!
Mr. de Winter wird seinen Coffee
mit uns einnehmen.

<Mr. de Winter>
Ich muss Ihnen leider widersprechen.

<Mrs. van Hopper>
Oh!

<Mr. de Winter>
Sie beide werden ihren Kaffee
mit mir einehmen!

<Mrs. van Hopper>
Ich habe Sie sofort erkannt, Mr. de Winter.
Was für eine angenehme Überraschung.
Ich dachte, Sie sind um diese Zeit in Manderley,
Ihrem verwunschenen Schloss in Cornwall.

<Mr. de Winter>
Manderley ist schön...

<Mrs. van Hopper>
Ja!

<Mr. de Winter>
...aber nicht so sonnig...

<Mrs. van Hopper>
Ja ja, das Wetter ist gut in Monte.
Allerdings ist momentan hier wenig los,
ich langweile mich grässlich.
Aber jetzt habe ich ja Sie getroffen.
Gemeinsam werden wir das Beste draus machen...

<Mr. de Winter>
Und wie gefällt Ihnen Monte Carlo?

<"Ich">
Na ja, ich finde es irgendwie unwirklich.

<Mrs. van Hopper>
Sie ist verwöhnt, Mr. de Winter!
Die meisten Mädchen in ihrem Alter
würden ihr Augenlicht dafür geben,
einmal Monte zu sehen.

<Mr. de Winter>
Ich denke, das wäre der Sache nicht sehr dienlich!

<Mrs. van Hopper>
Ja... Nein... Äh...
Hat Ihr Butler schon Ihre Sachen ausgepackt?

<Mr. de Winter>
Ich habe keinen Butler,
aber vielleicht macht es Ihnen Spaß...

<Mrs. van Hopper>
Ja...?

<Mr. de Winter>
...mir zu helfen?

<Mrs. van Hopper>
Hahaha... Sie scherzen...
Vielleicht könntest du ja Mr. de Winter zur Hand gehen?
Koffer auspacken kannst du ja!

<Mr. de Winter>
Ein charmantes Angebot,
doch mein Motto heißt:
Selbst ist der Mann!
Es war mir ein Vergnügen.
Meine Damen...

<Mrs. van Hopper>
Aber... Aber...
Sehr abrupt, dieser Abgang.
Ich fürchte, mein Kind,
du hast ihn vertrieben!

<"Ich">
Ich?

<Mrs. van Hopper>
Deine vorlaute Antwort
war sehr peinlich, mein Kind.
Du hast ihn verärgert!

<"Ich">
Das war nicht meine Absicht.

<Mrs. van Hopper>
Du hast die Unterhaltung
auf dich gelenkt,
und mich und dich blamiert!

<"Ich">
Ich traf noch keinen Mann wie ihn,
so seltsam, so geheimnisvoll.
Ich hoff', ich seh' ihn wieder…

<Mrs. van Hopper>
Du hast nicht sein Niveau,
mein Kind!

Du wirst niemals eine Lady,
weil dir jede Klasse fehlt.
Du wirst immer eine kleine,
unscheinbare, scheue,
graue Maus sein.
So sehr ich mich auch plage,
es ist sinnlos, was ich sage.
Es fehlt dir die Nonchalance, Darling,
die Contenance und Elegance,
nicht die geringste Chance, Darling!
Aus dir wird keine Lady,
das steht fest!

Und jetzt komm!
Mir geht es miserabel.
Ich glaub', ich krieg' eine Grippe.
Ich bleibe morgen im Bett, so!

 

 

 

あんたは決してレディーになれない

 

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
(ウェイターに向かって)

あなた、私の連れを知っているわよね
彼女を見かけなかった?

<ウェイター>
いいえ、申し訳ありません、マダム。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
やっと戻ってきたのね!
なんだってこんなに長くどこかへ行ってたのよ?

<「私」>
ファッション雑誌を取りに行っていたんです。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
何のために?

<「私」>
あなたが読みたいとおっしゃったので、
ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
私はお給料を払ってあんたをコンパニオンとして雇っているのよ、
お嬢ちゃん、
それに私は待たされるのが大っ嫌い。

<「私」>
すみません、ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
もう!クリームがついてないわ…
ここのウェイターは使えないわね!

<「私」>
私が呼びます、ミセス・ヴァン・ホッパー。
すみません、ムッシュー!

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
ウェイターをムッシューなんて呼ばないで、
それに「すみません」もなしよ!

<「私」>
すみません、クリームをお願いします!

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
なんてこと!
5つ星のホテルではね、
お金を払っている側の客が
ウェイターに愛想笑いなんてしないものよ。

<「私」>
すみません、ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
ホテルの人間には「お願い」をする代わりにね、
覚えておおき、お嬢ちゃん、
「命令」をするの!

<「私」>
はい、ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
両親を亡くして生活に困っていた
あんたをかわいそうに思って
雇ってあげたのに。

<「私」>
わかっています、
ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
そのお礼にあんたは毎日
私のことを煩わせてくれてるってわけね。
ようやく私にも
分かってきたわ。

あんたは決してレディーになれない
いろいろな資質が欠けすぎているもの
あんたの態度はいつも
ちいさくてみすぼらしい、びくびく怯えた
灰色のネズミみたいだわ
私があんたのことでどれだけ頭を悩ませてたって
どうでもいいと思ってるんでしょう、私の忠告なんて
私の言うことをちっとも学ぼうとしないんだもの
そうよ、あんたは決してレディーにはなれない! 

(「私」は新しく来たホテル客の男性に気を取られている)
それに… ちょっと、聞いてるの?
何をぼけっと見つめているのよ?

5つ星のホテルではね、
覚えておおき、お嬢ちゃん、
他人をじろじろと見たりしないものなの。

<「私」>
すみません、ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
まあ!ハロー!
やっぱりそうだわ!
あれはミスター・ド・ウィンターじゃないの…

<「私」>
お知合いですか?

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
あんたって人は雑誌を読まないの?

<「私」>
本を読む方が好きです、
ミセス・ヴァン・ホッパー。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
5つ星のホテルではね、
知ってなきゃならないのよ、お嬢ちゃん、
人気と尊敬を集めている人を。分かる?ハハ!
ミスター・ド・ウィンター? ハロー!!!
こっち!!!!!

<ミスター・ド・ウィンター>
(夫人に気が付く)こんばんは。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
覚えていらっしゃるかしら!
イーディス・ヴァン・ホッパー、
ニューヨークのパーク・アベニューに住んでいる者ですわ。
ああ、どうぞお掛けになって。
(「私」に向かって)ウェイターを呼んでちょうだい、
カップをもう一揃い持ってこさせて。
ミスター・ド・ウィンターがコーヒーを召し上がるのに
ご一緒させていただくから。

<ミスター・ド・ウィンター>
お言葉を返すようですが。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
あら!

<ミスター・ド・ウィンター>
あなた方がコーヒーを召し上がるのに
私がご一緒させていただきたいと思います。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
すぐにあなただとわかりましたわ、ミスター・ド・ウィンター。
なんて嬉しい驚きでしょう、
私、てっきりあなたはマンダレイにいらっしゃるものだと思っていましたの、
コーンウォールにあるあなたの夢のようなお屋敷に。

<ミスター・ド・ウィンター>
マンダレイは美しい…

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
そうでしょうとも!

<ミスター・ド・ウィンター>
ですが、あまり好天には恵まれません…

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
ええ、ええ、モンテの天気ときたらそりゃあ良いものですわ。
けれどここのところは何もすることがなくて
私はひどく退屈していたんです。
でも、こうしてあなたに会えたのですから、
私たちはよい関係を築けますわね…。

<ミスター・ド・ウィンター>
(「私」に向かって)モンテカルロは気に入りましたか?

<「私」>
ええと、ここは何となく作り物めいている気がして。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
この子は贅沢なんですよ、ミスター・ド・ウィンター!
これくらいの年頃の娘だったら誰でも
目ん玉だって差し出すでしょうよ、
一度でもモンテを見るためなら。

<ミスター・ド・ウィンター>
それではその娘たちは目的を果たせないように思われますね!

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
まあね…いえ…うーん…
あなたの執事はもう荷解きを済ませましたの?

<ミスター・ド・ウィンター>
使用人は連れてきておりません、
しかし、もしかするとあなたが…。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
はい…?

<ミスター・ド・ウィンター>
お手伝いくださいますか?

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
アハハ…ご冗談を…
もしかして、あんたならミスター・ド・ウィンターに

手をお貸しすることができるんじゃなくて?
もちろん、あんたなら荷解きができるわね!

<ミスター・ド・ウィンター>
魅力的なお申し出ですが、
私のモットーはこうなのですー
男は己のことを己で成すべし。
それでは失礼します、
ご婦人方。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
まあ…、ちょっと…。
突然行っちゃったわ。
私はこう思うのよ、お嬢ちゃん、
あんたが彼を追っ払っちまったんじゃないかって!

<「私」>
私がですか?

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
あんたの生意気な受け答えは
たいそう不愉快なものだったわ、お嬢ちゃん。
あんたが彼のことを怒らせちゃったのよ!

<「私」>
そんなつもりじゃなかったんです。

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
あんたは自分が
会話の中心になろうとして、
私に、そして自分にも恥をかかせたわけだわ!

<「私」>
今まで彼のような人には会ったことがない、
不思議で、秘密めいていて。
また会えたらいいのに…

<ミセス・ヴァン・ホッパー>
住む世界が違うのよ、
お嬢ちゃん!

あんたは決してレディーになれない
いろいろな資質が欠けすぎているもの
あんたの態度はいつも
ちいさくてみすぼらしい、びくびく怯えた
灰色のネズミみたいだわ
私がどんなに骨を折ったって
何の役にも立たないんだわ、私が何を言ったって!
あんたには平然とした態度が欠けているわ、ダーリン
落着きや、優雅さというものが
ほんの少しのチャンスもないわ、ダーリン!
あんたは決してレディーになれない
絶対に!

ああ、いやだ!
気分が悪くなってきた。
きっとインフルエンザに罹ったに違いないわ!
明日は一日中ベッドにいますからね、もう!

ミュージカル Rebecca 1.Ich Hab Geträumt Von Manderlay 和訳

場面概要

主人公の「わたし」が、昨晩見た夢をきっかけに、かつてマンダレイで過ごした日々を回想する。彼女の後ろには、マンダレイの使用人たちをはじめとした記憶の中の人々が、紗幕に隔てられて影のような姿で立っている。

 

 

1.Ich Hab Geträumt Von Manderlay

<"Ich">
Ich hab geträumt von Manderlay...

 

<Schatten>
Modernde Steine und schwarze Fassade,
So geissterhaft und unnachbar.
Schatten der Nacht,
Vor denen wir flohn,
Raunen von dem, was war.

 

<"Ich">
Und der Mond scheint hell,
Und der Fliederduft
Ist so süß und sehnsuchtschwer.
Und wie damals liegt Unheil in der Luft,
Doch heut schreckt es mich nicht mehr

Ich hab geträumt von Manderlay
Und der vergangenen Zeit.
Von Sehnsucht, Schuld und Dunkelheit
Und von Liebe, die befreit.

Und Rebeccas Geist
Schwebte unsichtbar
Durch das Haus und kam mir nah.
Und da war mir klar
Ich entgeh ihr nur,
Wenn ich weiß, was hier geschah

 

<"Ich"&Schatten>
Wir finden Stärke in Gefahr
Und Hoffnung in schwerer Zeit.
Ich hab geträumt von Manderlay
Und von Liebe, die befreit

 

<"Ich">
Alles fing in Frankreich an,
Damals im April 1926.
In der Eingangslounge
Eines Grandhotels
In Monte Carlo...

 

 

私はマンダレイの夢を見た

<「私」>
私はマンダレイの夢を見た

 

<影たち>
朽ちた石壁、暗く影の落ちた館は
亡霊のような姿で人を寄せ付けない
夜の影の中から
かつて私たちは逃げ出してきた
その影たちが囁く、在りし日の姿を

 

<「私」>
月は明るく輝き
リラの花は香る
甘く、強いあこがれをはらんで
かつてのように、災いの気配があたりに漂っている
けれどそれはもう私を脅かすことはできない

私はマンダレイの夢を見た
そして過ぎ去った日々のことを
憧れ、罪、暗い過去を
そしてそれらを解き放った愛のことを

レベッカの魂が
目に見えぬままに漂い
この家を通して私に近づいてくる
けれど私にはわかっている
彼女はもはや私を捕らえられないのだと
この場所で何が起きたか 私が真実を知ったその時から

 

<「私」と影たち>
私たちは逆境の中で強さを身につけ
困難の中で希望を見つけた
私はマンダレイの夢を見た
そして過去を解き放った愛のことを

 

<「私」>
すべてが始まったのはフランスから
1926年の4月のこと
モンテカルロにあった
あるグランドホテルの
ロビーラウンジで…

 

 

 

 

ミュージカル Rebecca 『レベッカ』 概要

 しばらくミュージカル「レベッカ」のドイツ語版の訳を載せていきたいと思います。 

このミュージカル「レベッカ」はウィーン初演が2006年、日本初演がシアタークリエで2008年に行われていました。

 私は日本初演を見た後、CDのブックレットに和訳がついていることを期待してウィーン初演のCDを購入したのですが残念ながらついておらず、自力で電子辞書を引きながら1年ほどダラダラと訳してやっと2幕の途中まで進んだのはいいのですが、そこで飽きて中途半端にほっぽり出してしまい・・・。

 訳し終わった分をブログに載せていくのと同時に、せっかくなので訳自体も最後まで進められたらと思っています。

 (ニコニコ動画に全訳をつけている凄い方がいらっしゃるので、もし動画と一緒に分かりやすい訳を知りたい方がいらっしゃればそちらをぜひおすすめします。)

続きを読む

WAITING FOR YOU (SILENT HILL 4) 和訳

作詞:Joe Romersa and Hiroyuki Owaku

作曲:Akira Yamaoka

 

2004年に発売されたホラーゲーム『サイレントヒル4 -ザ・ルーム-』の

サウンドトラックに収録されている曲。

映画版(1作目)にも登場。

Silent Hill Wiki より)

 

 

Waiting For You    
    

Your gentle voice I hear
Your words echo inside me
You said you long for me
And that you love me

 

And I want to see you too
Feels just like I'm falling
Is there nothing I can do?
Wonder if you hear my calling

 

I'm here and waiting for you
Where are you?
I can't find you
I'm here and waiting for you
I'll wait forever for you

 

Mom's gone to heaven now
Why won't she come back down?
Does she have someone she loves more than me?
I thought I could love you better
We were always together
If we took some time apart
You would finally know my heart

 

I'm here and waiting for you
Where are you?
I can't find you
I'm here and waiting for you
I'll wait forever for you

 

I fell in love with you and now you're gone
There's nothing left within my lonely room without you

 

I'm here and waiting for you
Where are you?
I can't find you
I'm here and waiting for you
I'll wait forever for you

 

I'm here and waiting for you
Where are you?
I cannot
I cannot find you
I'm waiting for you
Where are you?
Where are you?

    

 

あなたの優しい声がまだ耳に残っている
あなたの言葉がまだ頭の中にこだましている
あなたは言った、私が恋しいと
私を愛していると

 

私もあなたに会いたい
落ちていくような感覚
私にできることはもう残されていないのか
あなたにこの声が届いているのかさえ分からない

 

私はここにいる、あなたを待っている
どこにいるの?
あなたを見つけられない
私はここにいる、あなたを待っている
永遠に待ち続けるだろう

 

母さんは天国へ行ったのだという
なぜ彼女は戻ってこないのだろう
見つけたのだろうか? 私よりも愛する誰かを
もっと上手にあなたのことを愛せると思っていた
私たちはずっと一緒だった
今は少しの間、離れ離れになっているだけ
きっと最後には私の心をわかってくれるはず

 

私はここにいる、あなたを待っている
どこにいるの?
あなたを見つけられない
私はここにいる、あなたを待っている
永遠に待ち続けるだろう

 

あなたを愛していた あなたは去ってしまった
何も残っていない あなたを失った私だけがいるこの部屋には

 

私はここにいる、あなたを待っている
どこにいるの?
あなたを見つけられない
私はここにいる、あなたを待っている
永遠に待ち続けるだろう

 

私はここにいる、あなたを待っている
どこにいるの?
見つけられない
あなたを見つけられない
あなたを待っている
どこにいるの?
どこにいってしまったの?

 

 

 

続きを読む

YOUR RAIN (SILENT HILL 4)

作詞:Joe Romersa and Hiroyuki Owaku

作曲:Akira Yamaoka

 

2004年に発売されたホラーゲーム『サイレントヒル4 -ザ・ルーム-』の

サウンドトラックに収録されている曲。

ゲーム本編にメロディとして流れてはいるが、歌としては未使用。

Silent Hill Wiki より)

 

 

Your Rain    
    
Dancing alone again    
Again, the rain falling    
Only the scent of you remains to dance with me    
Nobody showed me how to return the love you give to me    
Mom never holds me    
Dad loves a stranger more than me    
    
I never wanted to ever bring you down    
All that I need are some simple loving words    
    
You touched my body once    
It burns me still softly    
Never forgets never again will be    
I cry    
    
Out of my head and I don't know what I found    
Over and over I feel it break me down    
    
On the sidewalk of the city    
Are my screams just a whisper?    
Busy people going nowhere    
See me soak in the rain    
No compassion, nothing matters    
My resistance is waning    
Like a flower in the basement waiting for a lonely death    
    
Out of my head and I don't know what I found    
Over and over I feel it break me down    
    
On the sidewalk of the city    
Are my screams just a whisper?    
Busy people going nowhere    
See me soak in the rain    
No compassion, nothing matters    
My resistance is waning    
Like a flower in the basement waiting for a lonely death    

 

一人きりで踊る 繰り返し、繰り返し
降りしきる雨の中で
あなたの香りだけが残っている 私と踊るために
誰も教えてくれなかった あなたがくれた愛にどう報いればいいのか
母は決して私を抱きしめようとしなかった
父は私よりも見知らぬ誰かを愛していた

 

あなたを失望させたかったわけじゃない
私に必要なのはただ、いくつかの愛の言葉だけ

 

いつか一度だけ、あなたが私に触れてくれた感触が
今もまだ優しく燃えている
決して忘れない 決してまた起こることはないだろう
そう言って泣いている

 

狂いかけた頭で、自分が何を探しているのかもわからない
何度も、何度も、自分が壊れていくのを感じている

 

都会の片隅では
私の悲鳴はただの囁きに過ぎないのか?
忙しげな人々はどこへも行かず
雨に濡れた私を見ている
哀れみも、意味も与えられず
私の抵抗は萎えていく
花瓶に生けられた花のように ただ孤独な死を待つだけ

 

狂いかけた頭で、自分が何を探しているのかもわからない
何度も、何度も、自分が壊れていくのを感じている

 

都会の片隅では
私の悲鳴はただの囁きに過ぎないのか?
忙しげな人々はどこへも行かず
雨に濡れた私を見ている
哀れみも、意味も与えられず
私の抵抗は萎えていく
花瓶に生けられた花のように ただ孤独な死を待つだけ

 

続きを読む